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片噛みについて

こんにちは、院長の中村 卓です。

今回は、片噛みについてお話ししていきたいと思います。

 

人間には右利きの人と左利きの人がいます。

中には両利きの人もいて、手先の感覚や力加減が大事な歯医者としてはうらやましい限りです。

一方、噛み癖にも右噛みと左噛みがありますが、利き腕と噛み癖には大きな違いがあります

利き腕は遺伝の影響が大きいとされており、幼少期にほぼ決まって一生変わりません。

練習によって反対の手も使えるようにはなりますが、利き腕自体が換わるわけではありません。

 

一方噛み癖は環境によって変化します。

「昔は右で噛んでいたけど、右の歯が抜けたので今は左で噛んでいる」などよく聞く話です。

抜けないまでも食べ物が挟まりやすいとか、なんとなく痛いとかの理由で片噛みになる人も多く居られます。

ただ人間(広く言えば生き物全般)にはある程度の順応性があるので、多少の困りごとがあっても、慣れてしまえば原因を忘れてしまいます。

なので「クセで右(左)噛みが多いです」と答える方も居られますが、ご本人も気付いていない原因がある場合が多いです。

 

自分が主にどちら側で噛んでいるか、意識している人の方が少ないと言って良いでしょう。

それを意識している人は、現に何か余程困りごとがあるか、あるいは歯医者などに注意されてわざと意識しているかのどちらかです。

いずれにしてもハッキリとどちら噛みかわかる状態は、あまり好ましいとは言えません。

 

では自分が主にどちら側で噛んでいるか意識していない人は、良い状態でしょうか。

これがそうとも言えません。順応性によって支障が隠されている場合も多いからです。

 

当院を受診された患者さんに「主にどちら側で噛んでいますか?」と尋ねると、「左右両方で平等に噛んでいます」と答える方も居られますが、本当に左右五分五分に使っている方はほとんどいません。良くて6対4か7対3程度です。

言い争っても仕方がないので敢えて否定はしませんが、客観的には歯の擦り減り具合、アゴの動き、歯並び・咬み合わせ、レントゲンで見たアゴの骨の形などから、特に年配の方の場合にはほぼ想像がつきます。

 

片噛みについて

 

 

そもそも人間の体は、思っているほど左右対称ではありませんから、それで当たり前なのですが、あまり差が大きくなると弊害が出てきます。ではどんな弊害が出てくるのでしょうか。

 

たとえばドライブが好きで、マイカーを2台持っている人がいるとします。一般的にはクルマに故障がなく安全に走れるのは「10年、10万キロ」が一つの目安と言われていますが、その2台に特に好き嫌いや用途の差がないとした場合、片方だけをひたすら走らせて乗りつぶし、その後もう1台に乗るのと、初めから2台を交代交代で走らせるのとでは、結局どちらが寿命が長いでしょうか。(車検や流行等の話は、今は横においてください。)

 

 

 

クルマに明るい方ならご存じでしょうが、当然両方を交代で乗ったほうが全体の寿命が長くなるに決まっています。

下手をすると乗らずに置いていたもう1台は、初めから動かなくなっているかもしれません。

結局、酷使するのも全く使わないのも良くないのです。メンテナンスをしながら、適度にかつ満遍なく使うのが理想です。人間の体もそれと同じです。

 

右側ばかりで噛んでいると、右の歯が早く擦り減ったり欠けたりします。特に喫煙癖のある方や糖尿病の方では、右の歯の根を支える骨が溶けやすくなります。左側の歯にはプラークが溜まり、ムシ歯になりやすくなります。(使わないほうが汚れやすいです。)

どちらかが噛みにくくなると反対側でばかり噛むようになり、またそちらに負担が偏って寿命が縮みます。アゴの骨や筋肉にも左右差ができて、顔がゆがんでくる人もいます。中にはタレントのつまみ枝豆さんのように、それをウリにしている人もいますが、普通はあまり好印象を持ってはもらえませんし、徐々に嚙むこと以外にも支障が出てくる人もいます。

片噛みについて

 

 

一度鏡に向かって笑顔を作ってみて下さい。

口角と目尻との距離に左右で大きな差がある方は要注意です。ショルダーバッグを右肩に掛けると支障ないのに、左肩に掛けるとすぐずり落ちてしまうといった方も、左右の肩の高さや筋肉の緊張度合いに差がある場合が多く、片噛みが肩こりや姿勢のゆがみを引き起こしている場合がありますので、ご注意ください。(それが原因のすべてではありません。)

片噛みについて

 

ムシ歯で崩れたり抜けた部分をそのままにしておくと、無意識のうちに反対側の負担が増え、結局全体としての寿命を縮めることになります。たとえ痛みがなくても、崩れたところ抜けたところは早めに補って、なるべく負担を全体に分散することが大切です。

我々歯医者は、少なくともお口の機能低下が原因でその方の寿命を縮めることにならないように、お手伝いをさせていただいています。